した。早く仕事を始めたく思います。「父の心配」というのは現代物で教養的なものです。梅雨《つゆ》がはれる頃までは仕事につくことはできますまい。それから妹が「葛の葉」というドラマを書きました。彼女ももはや二十五を過ぎますからこれからは発表させるつもりです。ではいずれお眼にかかっていろいろお話いたしましょう。
 それから私はまだ疲れやすいので少し話しては休み休みして幾度にも切って話をせねばなるまいと思います。これも含んでおいて下さい。有島氏も二十日に来て下さるらしいそうで喜んでいます。[#地から2字上げ](久保正夫氏宛)

   「歌わぬ人」

 今朝お手紙拝見しました。明日午後来て下さるそうでうれしくお待ちします。あなたが京都から四時間もかかるところへいつも心にかけて訪ねようとして下さることをいつもうれしく思っています。ただ残念なことには私の健康が疲れやすくて長く話すことができないことです。それで少しずつ話しては休み休みして散歩したり蓄音機を聞いたりして泊ってゆっくりして、そのかわり私のからだが疲れないように私が注意することを私のあなたを迎える気持ちが愛と体とにかけているためでないことを信
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