かに関係を持っていたにしても、私や妹に対する現実の愛と尊重とを信じている以上は狭量な、穿鑿《せんさく》だてをして気を悪くしたりしないことを誓いますから、その点は御心配なく発表されてはいかがですか。私は君の小説には知的な教養的な優れた要素が非常に多く含まれていて、そしてそれは今の日本の小説に最も欠けている点と思います。
有島さんはあなたの作を読んで何といわれましたか。「青と白」などはどうなされましたか。私も近いうちに岩波から第二の本が出ます。「俊寛」と「歌わぬ人」と「病む青年と侍する女」とを集めてあるのですが、私はもっとたくさん書いてから集めて出したかったのですが、書店のほうの都合と私の生計のほうの便宜とで、貧弱な書物になって何だか気恥ずかしく思っています。そのなかの「歌わぬ人」というのは私の初めて書いた習作で、あまりモチーフがアプジヒトリッヒなので、今の私にはかなり気になる作なのですが、自分には思い出もあるし、友だちからも勧められたので一緒に集めることにしました。(それに「俊寛」だけではあまり薄くなるので)それからあなたに一つお断わりしなくてはならないのは、その作の中にひとりの詩人が
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