どうも技巧が未熟で困りますが、だんだんとじょうずになれることと思います。気のおつきになったところは、遠慮なく注意して下さい。
 ここまで書いたところに、艶子が来ました。ちょっと、三次まで叔父の法事に立ち会ったついでに見舞いに来てくれたのです。蜜柑《みかん》をむきつつ話しています。あなたによろしく申してくれといいました。二、三日泊ってすぐに帰るでしょう。
 私の健康はだんだん恢復してゆきますから喜んで下さい。春にはお目にかかりたく思います。私も写真をとりましたから、数日の内にお送りいたします。脚本は、艶子の「禍いの日」というのを、謙さんのところに送りましたから、見てやって下さい。前にかいた「臆病にされた女」というのをそのうちにあなたのほうに向けてお送りします。私のは、遅筆で、汚なくて、清書しなくてはだめですから、また、いつか見て下さい。すぐ原稿用紙に、きれいに得かかないのです。私は「人類の愛」という喜劇をかく気です。愛を口にして隣人の運命に不注意な文士の虚偽に対する私の鋭い批評です。
 茅ヶ崎の大沢さんは実に同情します。あのような運命の下に苦しんでいる人に、なぐさめとなるには、いかにした
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