ません。私は妹を深く愛しています。それゆえにこの後は妹にもっときつくなろうと決心しました。甘やかすことは弱くむなしくさせるばかりですからね。私は一度は妹とも強い劇《はげ》しい関係に立たねばならない時を予感いたします。
 昨日、突然、本田さんが私の宅に訪ねて来ました。結婚の話はよしてしまったのだそうです。
 しばらく一燈園にいるつもりだそうです。本田さんにはアイテルなところがありませんから、一燈園の生活には適当と思って私も賛成いたしました。
 私はこの頃いつも内から何か促されているようなおちつかぬ心地で暮らしています。どうにかしなければならないという気がしじゅうしています。今の暮らし方、父に働かせて、読書と散歩とをしているだけの生活がどうも心にしっくりいたしません。そうしてるうちにほかの人々との交わりと調和させねばならず、私の生活は何の特色もない、軽いものに押し流されて行くようでなりません。読書したり散歩したり、芝居やカフェや活動写真を見たり(誘われれば断われないので)して日を暮らしている生活がフリボラスな気がしてなりません。暮らし方からどうにか革《あらた》めて行かねばならないと思ってい
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