でこられたのは、あなたの魂の力の非凡であったためと思います。私はあなたが後にいい家庭の主となられて、かつて得られなかったところのドメスチックの愛と睦びと、ゆったりした幸福を得られることを心から願います。
私はあなたにこそ幸福な結婚がさせたいと思います。あなたの幼ない甥たちも、母なき淋しさと不自由から、暗い影響を受けて、深いすぐれた人となるまでは、その不幸に打ち克つためにどんなにか悲しみを味わうことでしょう。父なくして耐えてこられたあなたにはその感じがいっそう強いことでしょう。私の宅にももし姉に不祥なことが起これば、母なき、おそらくは両親なき孤児ができるわけです。私はその女の児を、私の児のように愛し、そしてその不幸によって、かえって深い人生の味をさとるように育ててやろうと思います。
親のした過《あやま》ちが幼ないものの未来を支配し、その幼ないものの繰り返す過ちの種となるということは実に恐るべきことですね。罪の怖ろしいのは、他の罪の原因になることですね。艶子はすでに出発という朝、父の音信が来てしばらく帰らないことになりました。私は腸と痔とがまた悪くなったのでまことに困っています。病気に
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