騒動以来よほどつらかったものとみえて、世帯やつれがして、涙もろくなり、泣いてばかりいました。私は心からあわれになりました。そして行く末は、美しくないのはしんぼうして、私の一生の伴侶にしてやろうと思います。色香はなくても私は大切にしてくれるでしょう。
この頃の私の心は慈しみと悲しみとに濡れています。今日は雨が煙るように降って肌さむく、火鉢に親しみながらぼんやりしていました。あなたのことを思います。軽ろいところを捨てて重たくなり、甘えるのも脱して真実なるものへ深入りして下さい。あなたの成長をいのる。
[#地から2字上げ](久保正夫宛 二月八日。京都岡崎より)
隣人としての共棲
私はこの二十日ばかり病気で寝ています。根気がなくて御無沙汰になってすみませんでした。堪忍して下さい。正夫さんの「完全の鏡」は確かに受け取りました。また、長らく拝借していた「朝」と「イミテイション、オブ、クライスト」とを二、三日前に送り出しました。こちらで私のほか、数人読みました。まことにありがとうございました。私はこの頃毎日発熱して食事が進まないので物憂い心地で暮らしております。今日は根気がありませぬか
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