造物としての互いの従属を防ぐるものと思います。求めずに、ただ与えようとすることは傲慢《ごうまん》な、そして不可能なるのみならず、願わしからぬことと思われます。愛されたいねがいこそ人間と人間とを結びます。私は初め熱心に求めた人が、傷つけられたために、求めなくなる心の過程に深く同情します。けれどそれはあるがままの社会に不調和があるためであって、神の国に民たる人はその大切なツーゲンドとして、求めることアクセプトすることの自由がなくてはならぬと思います。エス様もよろこんで求めかつ受け取りなさいました。罪人からも税吏からも、ニイチェなどのいわゆる「与うるもの」よりもフランシスなどの、日の光をも恵みと感じた心の持ち方を私は喜びます。いつかあなたのおっしゃった Ich bin weil ich geliebt werde. の心地が最ものぞましいと思います。私は自分を全きものとしようとする努力は、常に自らと共存者とを調和のなかに従属せしめようとするねがいとはなるべからざるものと考えます。他のものをふみ越えて成長しようとする心は、神の子の属性ではありませんね。私はこの頃つくづくキリストがニイチェよりも
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