にて、今朝もとうとう雨になった庭を見ながらさまざまな淋しいことが考えられて、しおれていました時にあなたのお手紙が参りました。あなたのゆき届いた優しい言葉は静かに私を慰めてくれました。なんで私の心が傷つきましょう。私はむしろいつもうろうろと休息を知らない私のたましいのふつつかな騒擾《そうじょう》があなたの生活をみだすことをおそれています。自分の近くに unruhig な人を持つことはうれしいものでないことは知っていますけれど、そして私はみだれたときには少し待っておちついてから後に手紙を書くべきかとも思いますけれど、思ったことをすぐに書くものですからあのようになります。しかし私のどのような心地で暮らしているかということはあなたは察して下さいます。私はやはり私としては自然な手紙の書き方をすることを寛大に容れて下さることを期待して遠慮せずに心の一仰一揚をそのままたよりさせていただきましょう。
 あなたのこの前のお手紙にあった「愛されの意識」は私も人性の深い純なねがいとして、私たちの完くなろうとする憧憬《どうけい》のおもなる動機と思います。私は「神となり、超人となろうとする意志」などはかえって被
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