ればいいがと思っています。私はあれからまた悲しい思いにばかり訪れられましてね。私はこの頃はどうも私の両親の家にいるのが uneasy で仕方がないのです。両親を親しくそばに見ていると胸が圧しつけられるようです。私はあなた――母親思いのやさしい人に申すのは少し恥ずかしいけれど、どうも親を愛することができません。そしてまた母の本能的愛で、偏愛的に濃く愛されるのが不安になっておちつかれません。それでおもしろい顔を親に見せることはできず、そのために両親の心の傷つくのを見るのがまたつらいのです。私はわがままな子なのですよ、私の妹に家庭における私の様子を聞いてみて下さい。私はただ朝から晩まで苦しい苦しいで暮らしています。いっそのこと親が他人ならば私は苦しくても笑顔を向けて愛そうとするのに、親にはそれができないので悪い顔ばかり見せます。私はこの頃つくづく出家の要求を感じます。私は一度隣人の関係に立たなくては親を愛することができないように思います。昔から聖者たちに出家する者の多かったのは、家族というものと隣人の愛というものとの間にある障害があるためと思われます。私はあれからたびたび家を出ようと思いまし
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