て生きて行かねばならない。そして一個の神に造られたる人間がいかに生き、成長し、運命を知り、徳を得たかは、他の共存者の力となり、望みとなり、少なくとも自らの運命を省るたよりとはなると思います。私ごときが何によって他を潤おすことができましょう。ただ一つ与えられたる素材をもって最も真摯《しんし》に生きること、そしてその生涯を他人に献げたい、「共存者よ」私は言いかけたい。「私を見てくれ、私はかく虫けらのごとく貧しく醜く造られ、そしてかく拙《つた》なき運命を与えられ、しかしてこのところまで生長した。私に神の祝福を祈ってくれ」
 私はそのような態度でこれから生きてゆこうと思います。それで私は私の生活について語るために、表現してゆきましょう。それについて私はこれから書物を一冊世に出そうかと思います。それは私がこれまでいかに歩んで来たかを示し、この後の歩みの行く方に続く必然性を見てもらいたいためでございます。それで私は「他人の内に自己を見いださんとする心」と「恋を失うたものの歩む道」とのほかに、この三年間に育ってきた私の思想をまとめて、現在、他人に語りたい、すべての考えを集めて、書物にして出したいと思
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