のあなたのお手紙は輝きと潤いと喜びで私の心をたたきます。あなたはこの頃心の歩みが深まりいきいきとしているのを感じていらるるらしくあなたの手紙にそれがあらわれています。
私はあなたを祝します。そしてあなたのその成長が京都への旅に機縁を持っているようにおもわれるときに私は私の気持ちがつぐなわれるように感ぜられてまことに嬉しく存じます。
私はあなたを七条に送った夜にはあなたをひとりぼちであったという気がしてまことにすまないと思っていました。十日の御滞在中あなたをほったらかした時も多く、私の気むずかしさはしばしばいろいろなことで渋い表情をあなたに見せました。なにとぞ私を許して下さい。それにあなたのお手紙は不相応な感謝の情にあふれています。私はあなたの寛大な、人を裁かぬ、明るいお心でなかったならば、私をもの足りなくさえ感じられてもいたし方はないと思っています。神は不思議な仕方にあなたを恵まれました。私はあなたから輝かしい、力ある証をきくことができました。私ははげまされました。あなたはまっすぐに博く深く成長してゆかれる方のように思われます。
天香さんはあなたと内山君とのお手紙を読まれてたいへん悦び感謝なさいました。またかかるまじめにして有為なる人々の味方のできることを頼もしく感じると申されました。
天香さんは多分二十日頃に上京なさいます。あなた方にも会って話したいといっていられます。それについて天香さんが私におっしゃったことがございますから参考のために申し上げましょう。
天香さんはあなた方お二人の手紙を私に見せた後で「この人たちはからだが悪いのかね」と問われました。「いいえ丈夫です。どうしてそんなことをおっしゃいます」と私は伺いました。
「どことなしに感情が弱々しいからからだでも悪いのかと思った」
「そのようなところもありますね。しかしこの人たちは今は砕かれた心持ちにいて自らの弱さを重荷に感じている心のありさまでこの手紙を書いたのではありますまいか」
「それもそうだな、けれどただ優しく美しいだけでは悪の勢力に打ち克つことができないからな、強者の残した屑のなかでわずかに他のものを害さぬようにして生きてゆくことになる。それでは悪強いものをひざまずかすことができぬ。今の世界はギリギリまで切迫した問題にみちている。私たちは力と権威を持たねばならぬ」
「そうです、しかしこの人た
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