俊寛 言ってくれ。言ってくれ。わしの心はもはや悲しみにしびれている。
有王 若君は夜も昼も父母をお慕《した》いなされ、「母上はいずくにゆかれた! 鬼界《きかい》が島とやらへ連れてゆけ。」とおむずかり遊ばしましたが、六年前の二月ごろその時はやった痘《もがさ》という病気におかかりなされついにお失《う》せなされました。
俊寛 (石のごとく硬《かた》く冷たき表情にて)ただ一人残った娘は?
有王 姫君さまはこの世をはかなみ奈良の法華寺《ほっけじ》にて尼《あま》になって、母上や若君の菩提《ぼだい》をとむろうていられましたが、去年の秋の暮れふとおゆくえがわからなくなり、手をわけて捜しましたところ。(俊寛を見る。堪《た》えかねたるごとく顔をそむけ口をつぐむ)
俊寛 言ってくれ。ひと思いに。この場におよんでもはや私に悲しみをおしんでくれな。
有王 さる谷間に姫《ひめ》君のおなきがらが見つかりました。
俊寛 (ほとんど無感覚になりたるごとくうつろなる目つきにて)無だ! すべてが、すべてが亡びていたのか、わしの氏《うじ》を根こそぎ奪《うば》ってゆくのか。
有王 気をおたしかに!
俊寛 (われにかえりたるごと
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