んの栄《さか》えをも与えることもできないで。恥と煩《わずら》いとのみ負わせた。お前がわしの妻子に最後までつくしてくれたことは、わしの肝《きも》に銘《めい》じている。お前の一生をこの島にうずめさせてはならない。立ち帰ってお前の栄えを求めてくれ。
有王 お言葉が身に余りまする、私はあなたのためによろこんで死にます。この島に朽《く》ち果てることは物の数ではありませぬ。ただいかに心をつくしてもあなたのあまりに深い心の手傷《てきず》を慰《なぐさ》めることができないのを悲しむばかりでございます。
俊寛 わしを捨ててくれ。この島で一人死なせてくれ。
有王 私は最後まであなたのそばを離れませぬ。あなたとともに死にます。
俊寛 わしの死はもう手の届くほど近づいている。
有王 あゝ私は無常を感じます。静かにこの世を終わりましょう。来世《らいせ》の平安を祈りましょう。主従《しゅじゅう》は三世《さんぜ》と申します。
[#ここで字下げ終わり]
     間。
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俊寛 (何ごとかを思いつきたるごとく急に立ち上がり、やがてまっさおになりて、くずれるごとく寝床にすわる)

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