ぞ。ほえるとこの流人のようにぶたれるぞ。
漁夫二 (俊寛を突きやり)失《う》せろ、流人め。二度とこんなまねをしやがったら、生かしてはおかないぞ。
漁夫一 二度とこの界隈《かいわい》にうろつくな。
漁夫二の妻 いやなやつだね。あんなのを餓鬼《がき》というのだろうよ。
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三人退場。
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俊寛 (立ち上がり、あたりを見回す)あゝ、何というみじめさだ。(走り行き岩かどに頭を打ちつけんとして躊躇《ちゅうちょ》す)あゝ死ね! 死ね! (地に伏す)あゝだめだ。これでもわしは死ねないのか。(慟哭《どうこく》す。やがて岩かどに腰をかける。ふとそこに落ちいたる魚を見つける。無意識に拾い上げて食わんとす。この時犬の群れのほゆる声起こる。ぎょっとしてあたりを見回す)しっ。しっ。(犬ますますほえる。俊寛、石を拾う)畜生《ちくしょう》! (石を投げる。犬の声静まる。魚にかじりつく)
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有王登場。俊寛人の気配《けはい》に岩陰《いわかげ》に隠《かく》れる。
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有王 (あたりを見回しつつ)なんと言う荒れた島だろう。都《みやこ》にいる時|鬼界《きかい》が島のさびしいことは聞いていたが、これほどだろうとは思わなかった。ほんとうに鬼《おに》でも住むような島だ。この島で一日と暮らせようとは思えない。あゝご主人さまはこの島で、七年もただ一人で暮らさなければならなかったのだ。もしやもはやお果てなされたのではあるまいか。この島中を山をよじ浜辺《はまべ》を伝って捜したけれどもそれらしい人も見あたらない。もしか絶望のあまり岩かどに頭を打ちつけて自殺でもなさりはすまいか。いやいやそんなことはあるまい。奥方や若君の安否《あんぴ》もわからぬ先にそのようなことはなさるまい。(岩のほうに行く)
俊寛 (岩陰よりいで去らんとす)
有王 (俊寛の姿《すがた》を見て驚き、二、三歩後ろにさがる。小声にて傍白)あれはなんだろう。あの恐ろしい姿は! わしは餓鬼《がき》道へでも迷って来たのではあるまいか。いや、やはり人間のようだ。尋《たず》ねてみよう。(俊寛の後ろより声をかける)ちょっと、物をお尋《たず》ねいた
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