僧二 往生《おうじょう》の一大事について承りたき筋あって、はるばる遠方から尋ねて参ったと申します。皆熱心|面《おもて》にあふれていました。
親鸞 往生《おうじょう》の次第ならばもはや幾度も聴聞《ちょうもん》しているはずだがな。まことに単純な事で私は別に話し加える事もありませんがな。
僧二 私もさよう申し聞かせました。ことに少し御不例ゆえまた日をかえていらしたらどうかと申しました。しかし皆はるばる参ったものゆえ、ぜひ親鸞様にお目にかからせてくれと泣かぬばかりに頼みます。あまり熱心でございますから、私も不便《ふびん》になりまして、御病気のあなたを煩《わずら》わすのは恐れ入りますが、一応お尋ね申す事にいたしました。
親鸞 それはおやすい事です。私に会いたいのならいつでもお目にかかります。ただ私はむつかしい事は知らぬとその事だけ伝えておいてください。ではここへすぐ通してください。
僧二 ありがとうございます。さぞ皆が喜ぶ事でございましょう。(退場)
僧一 遠方から参ったものと見えますな。
僧三 熱心な同行衆《どうぎょうしゅう》でございますね。
唯円 お師匠様に会いたさにはるばる京にたずねて来た
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