行こうよ。
丁稚二 でもおそくなるとまたしかられるよ。
丁稚一 私はくたびれたよ。
丁稚二 またゆうべのように居眠りするとやられるよ。
丁稚一 でも眠くてねむくてしょうがなかったのだよ。
丁稚二 ずいぶん暑いね。(手で汗をふく)
丁稚一 そんなに草履《ぞうり》をパタパタさせな。
丁稚二 たくさんな人だね。
丁稚一 皆お寺参りだよ。
丁稚二 見せ物の看板でも見て行こうか。
丁稚一 (ちょっと誘惑を感じたらしく立ち止まる)でもおそくなるとしかられるから早く行こうよ。(退場)
親鸞 世のさまざまな相《すがた》が見られるな。私は昔から通行人を見ているとさびしい気がしてな。
唯円 私もさっきからそのような気がしていたのです。
親鸞 ここでしばらくやすんで行こうか。
唯円 それがよろしゅうございます。(座ぶとんを持って来て敷く)きょうはよく晴れて比叡山《ひえいざん》があのようにはっきりと見えます。
親鸞 (すわる)あの山には今もたくさんな修行者がいるのだがな。
唯円 あなたも昔あの山に長くいらしたのですね。
親鸞 九つの時に初めて登山して、二十九の時に法然《ほうねん》様に会うまではたいていあの山で
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