が仏様のお慈悲をいただいていればいつも心がうれしいはずですからね。いつも希望が満ちていなくてはなりません。また仏様の兆載永劫《ちょうさいようごう》の御苦労を思えば、感謝の念と衆生《しゅじょう》を哀れむ愛とが常に胸にあふれていなくてはなりませんからな。法悦《ほうえつ》のないのは信心の獲得《ぎゃくとく》できていない証《あかし》だと思います。気を悪くなさいますな。いや若い時はだれでもそんなものですよ。
僧一 おやお勤めの始まる鐘がなっています。
僧二 本堂のほうへ参らなくてばなりません。
僧三 ではごいっしょに参りましょう。唯円殿は?
唯円 私はお師匠様のお給仕をいたしますので。
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三人の僧退場。唯円しばらく沈黙。やがて茶器を片付け、立ちあがり、廊下にいで、柱に身をよせかけ、ぼんやりして下の道路を見ている。商家の内儀と女中と下の道路の端に登場。
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内儀 きょうはたくさんなお参りだね。
女中 いいお天気でございますからね。
内儀 ずいぶんほこりが立ちますね。(眉《まゆ》をひそむ)
女中 お髷《ぐし》が白
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