ですね。
僧二 おそばの御用事は皆唯円殿に仰せつけられます。
唯円 (登場。廊下伝いに本堂のほうに行く。僧のほうに会釈する)御免あそばせ。
僧三 唯円殿。
唯円 はい。(立ち止まる)
僧一 急ぎの御用でございますか。
唯円 いいえ。別に。ちょっと本堂まで行ってみようと存じまして。
僧二 ではちょっとここにお寄りなされませ。伺いたい事もございます。
僧三 お勤めの始まるまでお茶でも入れて話しましょう。
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唯円、僧のそばに行きてすわる。僧三お茶をついで唯円にすすめる。
[#ここで字下げ終わり]
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僧一 お師匠様の御模様はいかがでございます。
唯円 ただ今はお寝《やす》みでございます。
僧二 気づかいな御容体では無いのでしょうね。
唯円 はい、もうほとんどよろしいのでございます。きょうも大切な法然《ほうねん》様の御命日ゆえ起きてお勤めするとおっしゃったのを私が無理に御用心あそばすようにお止め申したのでございます。もう起きて庭などお散歩あそばすほどでございます。
僧三 それがよろしゅうございます。おからだにさわってはなりません。
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