国を行脚《あんぎゃ》している時でしたがね。お師匠様は道に倒れて泣き入られましたよ。
良寛 ではほんとうに生き別れだったのですね。
慈円 はい。(衣の袖で涙をふく)
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両人しばらく沈黙。
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良寛 まだ夜はなかなか明けますまいな。
慈円 まだ夜中過ぎでございます。
良寛 寒くてとても眠られそうにはありませんね。
慈円 でも少しなと眠らないとあすの旅に疲れますからね。
良寛 では少し眠ってみましょうか。
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両人横になり目をつむる。
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左衛門 (うなる)うーむ。うーむ。
お兼 (身を起こす)左衛門殿。左衛門殿。(左衛門をゆり起こす)
左衛門 (目をさます)あゝ、夢だったのか。(あたりを見回し、ぼんやりしている)
お兼 あなたたいへんうなされましたよ。
左衛門 あゝこわい夢を見た。
お兼 私はちょっとも寝つかれないでうつらうつらしていたら、急にあなたが変な声をしてうなりなさるものだからびっくりしましたわ。
左衛門
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