ら酒を飲みました。それから今はお前さんがたを……
お兼 左衛門殿。ちとたしなみなさらぬか。はたの聞く耳もつらいではありませんか。(顔を赤くする。親鸞に)御出家様。どうぞ堪忍してやってくださいまし。(左衛門に)あなたそんなに口ぎたなく言ったり、皮肉を言ったりしないでも、お断わりするのなら、そう言っておとなしくお断わりすればいいではありませんか。
左衛門 だから始めから断わってるではないか。わしは坊さんはきらいだから、お泊め申す事はできないのだ。
慈円 では私ら二人は泊めていただかなくともようございます。どうぞお師匠様だけは泊めてあげてくださいませ。たいへんお疲れでございますから。
良寛 御覧のとおり寒さにふるえていらっしゃいます。
慈円 吹雪《ふぶき》さえやめば、あすの朝早く発足いたしますから。
良寛 一夜の宿を頼むのも何かの因縁とおぼしめして。
左衛門 できないといったらできません。
[#ここから5字下げ]
外をあらしの音がする。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
慈円 私はどうなってもよろしい。ただお師匠だけは……(涙ぐむ)
左衛門 あいにくその
前へ 次へ
全275ページ中32ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング