あなたをお待ちかねでございます。
善鸞 父は会ってやると申しますか。
勝信 ゆるすと言って死にたいとおっしゃいます。
善鸞 (奥へ駆け込もうとする)
勝信 お待ちなされませ。ただ一つ。あなたは仏様をお信じなされますか。
善鸞 わたしは何もわかりません。
勝信 お父上はたいそうそれを気にしていられます。きっとあなたにそれをおたずねなされます。
善鸞 わたしは何も信じられないのです。
勝信 信じるといってください。信じると。お父上のお心が安まるために。
善鸞 でもわたしは…………
勝信 この世を去る人の心に平和をあたえてあげてください。
善鸞 (不安そうに)えゝ。
僧三 (いそぎ門より登場)善鸞様はまだお見えなさいませぬか。
善鸞 ただ今到着つかまつりました。
僧三 一刻も早く奥院へ。皆様お待ちかねでございます。もはや御最後も迫りました。
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退場。
善鸞、勝信門に馳《は》せ入る。輿《かご》それにつづく。僧二人も退場。舞台一瞬間空虚。黒き鳥四、五羽庭の木立ちより飛びいで、月の前をかすめて怪しげなる声にて鳴きつつ、屋根の上を飛ぶ。舞台回る。
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