が助けてくださいましょう。あなたの丹精しておまきなされた法の種子《たね》は、すでに至るところによき芽ばえを見せています。仏様のみ名はあなたの死によってますます讃《ほ》められるのでございましょう。
親鸞 仏さまのみ名をほめたてまつれ……(次第に夢幻的になる)わしの心は次第に静かになってゆく。遠い、なつかしい気がする……仏さまが悲引《ひいん》なさるのだ……外は涼しい風が吹いているのだね。
唯円 (ぞっとする)はい。いいえ、あかあかと入陽《いりひ》がさしています。
親鸞 近づいて来るようだ。兆《きざし》が……座敷はきれいに掃除《そうじ》してあるね。
唯円 塵《ちり》一つ落ちてはおりませぬ。
親鸞 わしのからだは清潔《きれい》だね。
勝信 昨日、御沐浴《ごもくよく》あそばされました。
親鸞 弟子《でし》たちを呼んでおくれ。皆呼んでおくれ。わしが暇乞《いとまご》いするために。最後の祝福をあたえてやるために。
勝信 かしこまりました。(立ち上がる)
唯円 (深き動揺を制する。小声で勝信に)お医者様を。
[#ここから5字下げ]
勝信いそぎ退場。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り
前へ
次へ
全275ページ中261ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング