何も申し上げることはございません。(涙をこぼす)ただ安らかな御最後を。すべてと和らいだ平和な御臨終を…………
親鸞 (涙ぐむ)みなの勧めに従いましょう。
唯円 おうれしゅう存じます。(手をつきうつむく、畳の上に涙が落ちる)先日おたより申し上げておきました。きょうあたり御到着あそばすはずでございます。
親鸞 善鸞はこのごろはどうして暮らしていますか。
唯円 稲田で息災でお暮らしあそばされます。
親鸞 仏様を信じていますか?
唯円 はい。(不安をかくす)たいそうお静かにお暮らしあそばしていらっしゃるようでございます。
勝信 善鸞様がどんなに、お喜びあそばすでしょう………けれどあゝ、それがすぐ長いお別れになるとは! (泣く)
親鸞 もう泣いてくれるな。(間)ただ祈ってくれ。わしはだいぶ心が落ちついて来た。魂を平らかにもちたい。静かにしておくれ。平和のなかに長い眠りにつきたいから。(勝信涙をおさえる。しずかになる)一生を仏様にささげてはたらいたものの良心の安けさがわしを訪れて来るようだ。あの世へのそこはかとなき思慕のここちにたましいは涙ぐみつつ、挙《あ》げられてゆくような気がする。しめやかな輝
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