唯円 (何かいおうとする)
親鸞 (さえぎる)いや。もう避くべからざるものを避けようとすまい。運命を受け取ろう。お互いに大切なことのみ言おう。
唯円 …………
親鸞 わしはもう覚悟している。
唯円 (苦しく緊張する)この上は安らかな御臨終を…………
勝信 (泣く)
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親鸞、唯円沈黙。勝信の泣き声のみ聞こえる。やがてその声もやみ、一座|森《しん》とする。
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親鸞 仏様がお召しになるのだよ。この世の御用がつきたのだよ。この年寄って病み耄《ぼ》けているわしを、この上この苦しい世のなかにながらえさせるのをふびんとおぼしめしてくださるのであろう。わしももうずいぶん長く生きたからな。九十年――といえば人間に許されるまれな高齢だ。もうこの世に暇《いとま》をつげてもいい時だ。(考える)
唯円 お師匠様の百年《ももとせ》の御寿命をいのりたてまつるのでございますけれど…………
親鸞 それが正直な人間の情《こころ》だよ。恥ずかしながらこのわしも、この期《ご》に及んでもまだ死にともないこころが残っている、それが迷いと
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