……………………
お寺の門で日が暮れて、
西へ向いても宿がなし、
東へ向いても宿がなし…………
[#ここで字下げ終わり]

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
お利根 (まりを落とす)あら。
お須磨 そらまりがそれた。(まりを拾おうとする)
お利根 (すばやくまりを拾いあげてすぐつきかける)
お須磨 あたしよ。ねえさま。
お利根 お待ちよ。も一度あたしよ。今のはかんにんよ。
お須磨 いやよ。私がつくのよ。
お利根 お待ちと言ったら。
お須磨 いや。いやですよう。(涙ぐむ)
お利根 (かまわずつきかける)茶の木の下に宿があって……
お須磨 (まりをとろうとする)あたしだわ。あたしだわ。
お利根 (くるりと横を向く)一ぱいあがれや長六さん。二はいあがれや長六さん。三杯目にゃ……
お須磨 (泣きだす)ねえさま。ひどいよ。
お利根 (おどろく)さあ。あげましょう。これ。(まりを持たせようとする)
お須磨 (振り放す)いやだよ。いやだよ。(声を高くして泣く)
勝信 (登場。髪を上品な切り髪にしている。門を出ると二人の争うているのを見て馳《は》せ寄る)どうしたのだえ。須磨ちゃん。
お須磨
前へ 次へ
全275ページ中240ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング