らっしゃるのよ。私はいとしくて涙が出てよ。駆けって行って、かえでさんに何か用事はありませんかと言ったら、どうぞこれを頼みますと言って手紙を渡して、あわてて、向こうへ行っておしまいなすったわ。
かえで あの時あなたに会わなかったら、夜通しでもうろうろしていただろうと言っていらっしゃいました。
浅香 あのかたなら、そうしかねなくってよ。(ほほえむ)だけど私はいいお役目が当たったものね。
かえで まあ。あんなことをおっしゃる。(ほほえむ)
浅香 (急に暗い顔をする)これから後はどうして会う気なの。
かえで (心配そうな顔をする)さあ。私はそれが心配でならないのよ。おかあ[#「かあ」に傍点]さんは今晩の権幕では、もうちょっとも外へは出してくれますまい。といって唯円様は宅《うち》へ来てくださる事はできないのだし。
浅香 お銭《あし》の都合をつけなくてはいけますまい。
かえで 唯円様はいくらお銭があっても、私はあのかたにだけはお銭で買われたくはないのよ。私はお客とは思いません。私は娘として取り扱いますときょうもお約束しましたのよ。自分を卑しいものと思ってはいけないとくれぐれもおっしゃったのよ。

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