よりほかにこのような話をする人はないのですから。ついつり込まれて、身の上話をいたしました。
唯円 いいえ。私はただなんと言ってあなたを慰めていいか、わからないのがつらいのです。どうぞ耐え忍んでください。私はそういうよりありません。悲しいのはあなたばかりではないのです。お師匠様でも、善鸞様でも、内容こそ違え、それはそれはたまらないような深い悲しみを持っていられます。でも耐え忍んで生きていられます。死ぬのはいけません。どんなに苦しくても死ぬのはいけません。自殺は他殺よりも深い罪だとお師匠様がおっしゃいました。仏様からいただいたいのちに対して何よりも敬虔《けいけん》な心を持たねばいけません。火宅のこの世では生きる事は死ぬる事よりも苦しい場合はいくらもあります。そこを死なずに、耐え忍ぶ時に、信心ができるようになるとお師匠さまがおっしゃいました。
かえで 私のようなものでも信心ができるでしょうか。
唯円 できなくてどうしましょう。あなたのような純な人に。
かえで 私は学問も何も知りませんよ。
唯円 そのようなものは信心となんの関係もありません。悲しみと、愛とに感ずる心さえあればいいのです。
かえ
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