で 半月ぶりですわ。
唯円 その半月の長かったこと。私はその間あなたの事ばかり思い続けていました。
かえで 私もあなたの事はつかのまも忘れた事はありません。恋しくて、すぐにも飛んで行きたい事が幾度あったか知れません。でもどうする事もできないのですもの。私もどかしくてたまりませんでしたわ。
唯円 私もお寺でお経など読んでいても、ぼんやりしてあなたの事ばかり考えているのです。私は晩のお勤めを済ませたあとで、だれもいない静かな庭を、あなたの事を思いながら歩くのがいちばんたのしい時なのです。
かえで あなたなどはそのような時があるからようございますわ。私なんかそれはつらいのよ。一日じゅう騒々しくて、じっとものなど考えられるような時はありませんわ。
唯円 ほんとにもっとたびたび会えたらねえ。
かえで この前の時だって、ねえさんがとりなしてくださらなかったら会うことはできなかったのですわ。
唯円 浅香さんはどうしていられます。
かえで 善鸞様がお帰国あそばしてからは、それはさびしい日を送っておられます。
唯円 あのかたのおかげであなたに手紙があげられるのです。この前も私は夜おそくまで起きてあなたに
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