みつづけではありませんか。
善鸞 この私に摂生を守れと言ってくれるかな。お前は貞女だな。はゝゝゝ。ここで川の景色を見つつ飲み直そう。さっきのお前の陰気な話で気がめいった。(仲居に)すぐに持って来い。
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仲居退場。
[#ここで字下げ終わり]
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浅香 ほんとうにもうおよしなさればいいのに。好きでかなわぬ酒でもないのに。
善鸞 私は飲んで飲んで私のからだを燃やし尽くすのだ。からだで火をともして生きるのだ。火が消えるとさびしくてしようがないのだよ。
浅香 でもほどがありますわ。
善鸞 さびしさにはほどがないのだよ。魂の底までさびしいのだよ。
浅香 そのさびしさを慰めるために私たちがついているのではありませんか。
善鸞 うむ。お前たちは私に無くてはならぬものだ。お前たちがなくては生きられない。そのくせお前たちと遊んでいるとまたよけいさびしくなるのだ。浅香、お前はいつもさびしい顔をしているね。きょうはもっと陽気になってくれ。
浅香 でも私の性分なんですからしかたがありませんわ。
善鸞 きょうは皆騒ぐのだよ。何もかも忘れてしまうのだよ
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