。私の希望、いのち、私そのものを仏様に預けるのじゃ。どこへなとつれて行ってくださるでしょうよ。
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一同しばらく沈黙。
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同行一 私は恥ずかしい気がいたします。私の心の浅ましさ、証拠が無くては信じないとはなんという卑しい事でございましょう。
同行二 私の心の自力《じりき》が日にさらされるように露《あら》われて参りました。
同行三 さまざまの塀《かき》を作って仏のお慈悲を拒んでいたのに気がつきました。
同行四 まだまだ任せ切っていないのでした。
同行五 心の内の甘えるもの、媚《こ》びるものがくずれて行くような気がします。
同行六 (涙ぐむ)思えばたのもしい仏のおん誓いでございます。
親鸞 さかしらな物の言い方をいたして気になります。必ずともにむつかしい事を知ろうとなさいますな。素直な子供のような心で仏様におすがりあそばせ。あまり話が理に落ちました。少しよもやまの話でもいたしましょう。もう名所の御見物はなされましたか。
同行一 まだどこも見ませんので。
同行二 京に着くとすぐここにお参りいたしましたの
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