ぬ。
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おん身はおん身の愛する者のために死にあたふや?
しかり、あたふ。我が愛する者のために死なんはいと大いなる幸福なり。よろこびてこそ死なめ!
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これはイタリアの恋愛詩人ダヌンチオの詩の一句である。
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畏きや時の帝を懸けつれば音のみし哭かゆ朝宵にして
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これは日本の万葉時代の女性、藤原夫人の恋のなやみの歌である。彼女は実に、××に懸想し奉ったのであった。
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稲つけばかがる我が手を今宵もか殿のわくごがとりて嘆かな
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これは万葉時代の一農家の娘の恋の溜息である。
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如何にせんとも死なめと云ひて寄る妹にかそかに白粉にほふ
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これは大正時代の、病篤き一貧窮青年の死線の上での恋の歌である。
私は必ずしも悲劇的にという気ではない。しかし緊張と、苦悩と、克服とのないような恋は所詮浅い、上調子なものである。今日の娘の恋は日に日に軽くなりつつある。さかしく、スマートになりつつある。われらの祖
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