女性の諸問題
倉田百三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)原型《ウールティプス》だ。

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)さとり[#「さとり」に傍点]の極意

×:伏せ字
(例)彼女は実に、××に懸想し奉った
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     一 女性と信仰

 男子は傷をこしらえることで人間の文明に貢献するけれども、婦人はもっと高尚なことで、すなわち傷をくくることで社会の進歩に奉仕するといった有名な哲人がある。この人間の文化の傷を繃帯するということが、一般的にいって、婦人の天職なのではあるまいか。
 何といっても男性は荒々しい。その天性は婦人に比べれば粗野だ。それは自然からそう造られているのである。それは戦ったり、創造したりする役目のためなのだ。しかしよくしたもので、男性は女性を圧迫するように見えても、だんだんと女性を尊敬するようになり、そのいうことをきくようになり、結局は女性に内側から征服されていく。社会の進歩というものは、ある意味で、この男性が女性の霊の力に征服されてきた歴史なのだ。
 働きのある立派な男子は女性を虐げて喜ぶものではない、か
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