愛や、情事をつみ重ねようとすることは実に不潔な、神聖感の欠けた心理といわねばならぬ。不潔なもの、散文的なもの、いかがわしいものはすべて壮年期に押しやって、その青春の庭をできるだけ浄く保たねばならぬ。そしてともかくその庭で神聖な結婚式を挙げねばならぬ。
 嫌悪すべき壮年期が如何に人生のがらくたを一杯引っくり返してあらわれてこようとも、せめて美しく、清らかな青春時代を持たねばならぬ。ましてその青春を学窓にあってすごし得ることは、五百人に一人しか恵まれない幸福である。それは学生諸君が自分で気のつかない実に大きな幸福であって、学びつつある姿勢の下で、かつ想いかつ恋し得ることは、この人生における天国ともいうべきものなのである。清らかな、熱き恋をしなければならぬのは当然な義務である。汚れた快楽など思うべきものではない。
 学生時代に汚れた快楽に習慣づけられた青年の行く先きは必ず有望なものでない。それは私の周囲に幾多の例証がある。社会的にも、人間的にも凡俗に堕《お》ちて行っている。その原因は肉体的快楽を知ることによって、あまりに大人《おとな》となり、学窓の勉強などが子どもじみて見え、努力をつみ重ねて
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