る」という法則にしたがうものであり、その結果として両者融合せる新しき「いのち」が生誕するのだ。
 子どもの生まれることを恐れる性関係は恋愛ではない。
「汝は彼女と彼女の子とを養わざるべからず」
 学生時代私はノートの表紙に、こう書きつけて勉強のはげましにした。

     四 青春の長さと童貞

 恋愛は倫理的なあこがれであるだけでなく、肉体的、感覚的な要請であることはいうまでもない。それは、露わにいえば、手を、唇を、肌を相触れんとするところの衝動でもある。したがっていかなる倫理的な、たましいの憧憬を伴う恋愛も終局はその肉体的接融をまって完成すべきものではある。しかしたましいの要請が強ければ強いだけ、その肉体的接融はその用意を要する。すなわち肉体だけがたましいの要請をはなれて結びつかぬように、そうした部分がないように隙間なく要求されてくるのは当然なことである。これは一方が打算から身を守るというようなことでなく、相互にそうしなければ恋愛の自覚上気がすまない。これが本当の慎しみというものだ。
 学生は大体に見て二十五歳以下の青年である。二十五歳までに青年がその童貞を保持するに耐えないという
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