ように見ゆる。中につきても、私はその最も忌むべきものの一つとして、愛と肉交との問題を挙げずにはいられない。
 男女が肉体の交わりをなすことは、日本の在来の習慣(あえて道徳とはいわない)ではなんらかの形式において社会的公認を得たる夫婦の間においてのみ正しとされた。近代人はまずこの思想を毀《こわ》した。私もこれに対してはなんらの異議も持たない。道徳は社会制度の規定より生ずるものではない。天の下、地の上に人間と人間とが交わるときに、われらの心の奥に内在する真理の声によって定まるのである。たとい夫婦の間に行なわるる肉交のみが正しとするも、(私はそれをも認めないが)そは夫婦なる社会上の規定にその根拠を持たずして、夫婦関係に特在するある事情がそれを許すのでなくてはならない。これに次いで来たるものは、恋愛が存在する男女間の肉交は正しとする思想である。この思想は新人の間に最も認めらるる思想であって、ここに私は主としてこの思想に対する私の疑点を述べたいのである。このほかになお一般に絶対に肉交を是認する思想がある。その唯一の理由は肉交は人間の自然に与えられたる生理的要求であるからであるというのである。しか
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