してのみ与えらるべきものである。ある種の才能の優越がいかに驚くべきものがあろうとも、この人と聖人とは厳格に区別されねばならない。世には才能に向かって崇拝しようとする人々があるが、私はかの英雄や天才をただ as such に崇拝する気にはなれないものである。もし聖人といわるべきほどの者がいるとすれば、私ははじめてその人を偉大なる人間とほめよう。けれど、はたして人間に(ことに今の世に)聖人と呼ばるるに価するものがいるであろうか。M氏はいないと思うのであろう。私はその点については口を緘《ふさ》ぐ。しかし見回す限りにおいて人間はあまりに小さく醜い。人間はいかに大きく見えても人間としての卑しさと弱さと醜さをもっている。業報によって生死の世界に生まれ出でたるものとしての制限を持っている。仏を憶念するに馴れたる心を持って人間に対するとき、ことにその醜さが際立って見える。しかもその醜き人が誇り顔に、自己の偉大を衒《てら》うがごとくにしてわれらの前に立つときにわれらは一種の皮肉なる感情を挑発さるる誘惑を感ずることを禁じ得ない。しかし私はその誘惑に身を任せてはならないと思う。そこに微妙なる、しかしながらき
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