驍ゥもしれません。先きのことはなかなか解るものではありません。あなたは私のいうことを心細く頼りなく感じなさいますか?
 けれども私たちに許されていることは「神様聖旨ならば二人を繋いでください」と祈ることだけです。けれどもそこに祈祷の微妙な力があるのではありますまいか。すなわち力ある祈りはエホバの御座を揺がすという言葉もあるように私たちは祈りによって、聖旨を呼び醒ますことができるのではありますまいか。祈りが熟したときに聖旨が生まれるのではありますまいか。祈りが聴かれるとはその間の消息を伝えた言葉でありましょう。もしも二人の愛が真に切実にして、深純なるものならば、エホバがそれを善しと見て祝福して許してくださるのではありますまいか。尊い恋は運命的の恋です。運命を呼びさますものは熱き祈祷です。祈祷は最深の実践的精神のあらわれです。
 清い、美しいお絹さん。祈りましょう。祈りましょう。私は希望を認めたような気がして今夜は心が躍ります。神さまに任して安らかに眠ってください。あなたははたらくこともよして、考え込んでばかりいらっしゃるという言葉は私を不安にします。病人は大切にしてやらなければなりません
前へ 次へ
全394ページ中252ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング