りましょう。一つは自分の発情を慎むこと。も一つはみずからをわざと殺さぬこと。神様の私たちの心のなかに生まれしめたまいし若芽をわれとわが手で摘み取らぬこと。私はそれを侵しかけているのでした。それからもう一度だけあなたに明らかにしておかねばならないことがあります。それはあなたと私との間に恋が生まれるのは、神様の聖旨であるかどうかはまだたしかでありませんということです。しかしもしや神様があなたと、私とを繋《つな》いでくださるのだったらどうでしょう。それを思うとけっして別れる気にはなりません。ではどうしたらいいのでしょう。私の考えではあなたと私とはやはりこれまでどおりに交わりをつづけてゆくべきでしょう。そして前にいった二つの意味で神様を畏れつつ運命の赴くところに任せてゆきましょう。何よりも発情に溺れずに、けれどけっしていたずらに自分に背かずに。もし聖旨ならば二人の運命はしだいに切迫してゆくでしょう。そしてその内面的の必然性が神の聖旨を証するほど熱してきたときに私たちは喜んで結婚しましょう。もし聖旨でないならば二人の交わりはそれとは違った性質のものになるでしょう。そしてほんとの善いお友達になれ
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