Bまたもはや一たび一人の少女に情熱を捧げて、燃えのこりの灰殻のような心です。あなたは純潔な、その年になってまだ子供らしさのぬけないほど無邪気な心です。私とは似合いません。あなたはそれを知っての上でのことだとおっしゃいます。けれども私としてそれを平気で受け取ることはできかねます。あなたは私がさかしらに、人の心まで掩《おお》いかぶせるように、いってのけると思われるのはまことにごもっともです。聖書のなかにもあるごとく、神の※[#「耒+禺」、第3水準1−90−38]《まぐ》わせたもう男と女との間にのみ全き恋は成就いたします。あなたはいつまでもかわらず私を恋するとおっしゃいます。あなたはそう信じなさいます。それはけっして無理ではありません。むしろあなたがまじめな熱心な人だからです。けれどもそれはけっしてまだたしかとはいえません。神の聖旨でないならばいつかは消えてゆきます。三年前私はあなたのとおりの心持ちになりました。そしてまじめな、純な、おさない恋人のいつもするように、天を指し、地を指して、幾度とこしえにと誓ったことでしょう。けれどもその誓いはついに空しくなってしまいました。あなたの心もまだ私は
前へ
次へ
全394ページ中244ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
倉田 百三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング