Mずることができません。あなたの美しい玉のごとき運命を私ゆえに傷つけさせてはなりません。私はどうせ永くは生きられない病身ものです。もし病気が伝染したらどうしましょう。そして私はかいしょ[#「かいしょ」に傍点]はなし、安らかな暮らし方のできる身分でもありません。あなたの考えていらっしゃるようなことはとても実行できる見込みはありません。あなたは私を憐《あわ》れみ愛してください。
私はそれで満足です。それにあなたにこのようなことをいわれると私は苦痛です。もはや私のかなわぬこととあきらめていた運命が私の目の前に再び媚《こ》び戯れようとして、私はそれを打ち払うのに不安になります。私の忘れたい悲哀が蘇ってまいります。どうぞ後生ですからよしてください。そして安らかに、潤うた交わりをいつまで続けよう[#「いつまで続けよう」はママ]ではありませんか。その方がかえって善いコンスタントな、魂の騒がない、静平な交際ができます。あのいつもいう聖フランシスと、聖クララとのように清らかな交わりを一生の間続けたらどんなに幸福でいさぎよいでしょう。アシシの静かな森のなかで太陽は恵むがごとく照らす木のかげで、二人は神様
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