熕Mじ切ったような目つきをして眺めながら、身を任せているときに、誰がそれを欺くことができよう」といっています。心の清いあなたはじきに信じました。そしてそれには相当しないと私がたびたびいうにもかかわらず、日ならずして私を崇拝するようになりました。私はあなたの前にいるときには、あなたの Virtue のために、私の善い素質のみが働くのですから、あなたが私を尊敬するようになったのは無理もないと思います。そしてあなたは一すじの女心から、昨日のような手紙をくださったのでした。私はそれを読んで涙がこぼれました。
 信じやすい、明るい、善い心、それに愛を求める女らしい、純真な人間性がありがたかったからです。けれど私はすぐに強く思い決めました。私は神を畏《おそ》れねばならない! と。私はこの前の夜、あなたにあのような話をしなければよかったと後悔しました。実際私はなるべくめったにいうまいとは常々覚悟していたのです。けれど私の脆《もろ》い心と、そしてことにはあなたの受けとりやすい、熱心な心に触れて、私は訴える心地に久しぶりになりました。そうです。久しぶりです。私はただ与えよう、けれどけっして訴えまいと M
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