宴Xラと理解されるように私にも思われました。私はあなたの魂のなかに善良な高尚な思想に感動することができる知恵と徳の芽を見いだしました。そしてあなたが学問が乏しいために(失礼ですけれど)それはかえって純な、ありのままの、素質的のものとして私には感ぜられました。
そしてあなたは私のひそかに恃《たの》んでいる尊い部分に触れてくれました。私はまことに嬉しゅうございました。そして私のベッドの側にじっと坐《すわ》って注意深い耳を傾けているあなたに私の信ずる最も高き善き思想をできるだけ単純な、清い言葉で話しているときに、私はときとして私を善い人間であるかのように、まれには聖者であるかのように感ずることさえありました。
私はあなたの熱心な祈りをきき、賛美歌を共にうたいました。これまで永い間私はあまり荒々しい人々のなかにのみ棲《す》みすぎたように思っていましたが、あなたと逢《あ》って私は鳩《はと》のような、小鳥のような――それは私の心にながくとざされていたところのやさしい情緒をふるさとのおとずれでも聞くように思い出しました。それほどあなたは純な人でした。ドストエフスキーは、「もしも鳩が私たちの顔をさ
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