轣Aしだいに真理を体得してゆこうとするならば、私たちはたたかいと祈りの心持ちのなかに入って行くであろう。そしてそれは、私にとっては、ようやく明らかになりゆく真理の姿である。
[#地から2字上げ](一九一五、冬)
[#改ページ]
過失
――お絹さんへの手紙――
一
私は昨日の朝ガーゼ交換が終わって、激しい苦痛の去ったあとのやや安らかな、けれど、いつもの悲しい心地にとざされて、寝台の上にやすんでいました。
そのときあなたの手紙がとどきました。私は不思議にもそれを読んで驚きませんでした。私の恐れているものがついにきたと思いました。
そして私は心の奥でひそかにそれを待ち設けていたのではあるまいかと、思うときに、畏《おそ》ろしいような心地がいたしました。お絹さん私はあなたよりも分別があります。それは私が悲しい経験から得たありがたい分別です。あなたの心はよく解《わか》ります。けれどもあなたの手紙を読んだとき、私の胸の底には彼女の運命を傷つけてはならない。と叫ぶ強い声がありました。男というものはずるい[#「ずるい」に傍点]ものです。ことに女にかけてはね。私は清い人
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