る人々の間に起こる不調和である。人間の触るるところ、集まるところ、気拙《きまず》さと不調和とにみちている。いやもっと深刻な残冷な、人間の当然な幸福と願い――それはけっして我儘なのではない、人間として許されていいほんの僅かな願いをも圧し潰《つぶ》してしまうような不調和がある。みずからその災害を被らずとも、世界を調和あるコスモスとして胸に収めて生きたいヒューマニストにとってはこれはじつに苦痛なことである。そこには人間の切なる情実の複雑な纏絡《てんらく》があるだけに、ほとんどこれのみにて人をして厭世観を抱かしむるほどの悩みの種となるものである。しこうして私は実際に私の幸福と願いとを奪却せられた。私の願いとは愛する女と mitleben して、そこに生活の基礎を置き人間としての発達を遂げんことであった。深い善い幸福がその中に宿るべきであった。
 この一年間の私の心の働き方はじつに純なものであった。愛と労働と信仰――人間として、また私の個性の行くべきまっすぐな道に私は立っていたに相違ない。それでなくてはあれだけの充実は感ぜられない。それがめちゃくちゃに押し崩されてしまった。信じて築いた私の精神
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