謔ュ似た人々のはびこることを私と共に心配したまえ。あなたの声望はあなたの周囲に子分を作った。私はあなたの周囲に漂う気分を好まないものである。それは真実なる生命の進転を妨げるものである。一高を化して常識の府となさんとする忌むべき傾向を孕《はら》んでいる。たとえばいわゆる演説家とクリスチャンの増加するのは私は眉を顰《ひそ》める。演説家はまだいい、クリスチャンの踵《きびす》を接して生ずるのは最も苦々しき事実である。一人の人間が信仰生活に入るのだって私は容易ならぬできごとだと思う。ほとんど奇跡に対するほどの驚異の目をもって見るべき大事実だと思う。それがどうしてわれもわれもと信仰生活に入ることができるのであろうか。信仰生活の大安心、大喜悦の中に入り得るためには、血を吐くような深刻な悩みと、砂漠をうろつくような彷徨と、大地のずり落ちるような不安と、盲目になるほどの迷いとがあるべきはずだと思う。どうしてそうやすやすと市街を歩いてる人がふと教会堂に入るように信仰生活に入ることができるのであろうか。私はどうしても理解することができない。私は彼らの信仰を疑わずにはいられない。キリストの人格を崇拝する点にお
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