スめによろこばしからぬ現象だと思う。じつに校内においてときめき栄えてるのはあなたのような人らではないか。私らは隅の方に圧し潰されそうになって、ようやく身を保ってるような形である。いくら叫んでも私らの声は通らない。試みに演壇に立ってみよ。君は聴衆を味方として感ずることができるであろう。私をしてあなたに代わらしめたならば疑いの目、冷たい目、嫌厭《けんえん》の目を顔に浴びねばならない。あなたの考えてるようなことは何の苦もなく発表できる。私の考えてるようなことはなかなか発表できない。こうして書いていてもこれが部長のところを通過するかどうか心もとないのである。校友の優しい目を予期して私が提供した、私にとっては一生懸命であった実際生活の報告書は私を囚人のごとき姿して、私を審《さば》かんとする校友の卓の前に立たせたではないか。私の先生の一人は晩餐会の席上、「いかがわしいことを書いた」というぼんやりした理由で私を学校の名誉を傷つけた不良少年とならべられたではないか。Y君よ、私らが何ではびこられるものか。それは安心してそれよりもあなたの周囲に、あなたの真面目な点だけを抜いた残りの部分だけあなたにはなはだ
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