驕Bたとえば団体の存在を認めぬような思想を排斥する前にあなたは少しでも躊躇するであろうか。その思想とその持主の内生活との間に存する特殊の事情を顧みる暇を持ってるであろうか。
 私は本校に来ても、あなたのようにみずから善良なる校風に感化せられたというような点を持っていない。また酒も飲むようになったし、あなたから見ればどうかと思われるような所へも平気で行くようになった。それならば私は堕落したのであろうか。あなたの演説のままを当て篏めれば私などはこの頃学校にはびこることをあなたの憂うる悪人であるかもしれない。しかし私はけっして中学校のときより堕落したと思うことはできない。いな、私は真面目になったと思ってる。生命に忠実になったと信じてる。酒を飲むようになったから真面目になったというのではない。それにもかかわらず、真面目になったというのである。酒を飲むとか、飲まぬとかいうようなことは私にはむしろどうでもいいことである。もっと大きな、深い根本的な点において私は真面目になったと信じるのである。
 私は学校にはびこるのは私のような人ではなく、むしろあなたのような人だと思う。そしてそれを生命真実の発展の
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