Eたる性欲のみの発動となって私の戦闘的な利己主義の生活をもの凄く彩ったこともあった。けれども一度その殺伐たる生活より醒《さ》めて、深く、もの静かな、また切実な宗教的な気分に帰って以来、この心は深く、優しく、まことあるものとなっていた。私は異性に対して寛大な、忠実な、熱情ある心を抱いていた。私は性の問題に想い至ればすぐに胸が躍った。それほどこの問題に厳粛なる期待を繋いでいた。私の天稟のなかには異性によりてのみ引きいだされ、成長せしめられ得る能力が隠れているに相違ない。また女性のなかには男性との接触によりてのみ光輝を発し得る秘密が潜んでるに相違ない。私はその秘密に触れておののきたかった。私は両性の触るるところ、抱擁するところそこにわれらの全身を麻痺せしめるほどの価値と意義とが金色の光をなして迸発《ほうはつ》するに相違ないと思った。私は男性の霊肉をひっさげてただちに女性の霊肉と合一するとき、そこに最も崇高なる宗教は成立するであろうと思った。真の宗教は Sex のなかに潜んでるのだ。ああ男の心に死を肯定せしむるほどなる女はないか。私は女よ、女よと思った。そして偉大なる原始的なる女性の私に来たら
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