謔、な心持ちになれない。頼もしくない。
私は憧憬の対象を友に求めようとした。私には細かな理解をもって骨組まれ、纏綿たる愛着をもって肉づけられたる真友があるではないか。けれども私はこれにも満足することができなかった。友には肉が欠けている。これが私を少なからず失望させた。私はその頃から肉というものを非常に重んじていた。肉は生命の象徴的存在である。生命は霊と肉とを不可分に統合せる一如である。生命を内より見るとき霊であり外より見るとき肉である。肉と霊とを離して考えることはできない。肉を離れて霊のみは存在しない。
私は人格物を憧憬するならば霊肉を併《あわ》せて憧憬したかった。生命と生命との侵徹せる抱擁を要求するならば、霊肉を併せたる全部生命の抱合が望ましかった。この要求よりして私は女に行かねばならなかった。人格物を憧れ求むる私の要求は神に行き、友に行き、女に至って止まった。そして私の憧憬の対象がしっくりと決まったような心地になった。私の全部生命は宗教的なる渇仰の情を漲《みなぎ》らせて女を凝視した。私の心の隅には久しき昔より異なれる性を慕い求むるやるせなきあくがれが潜んでいた。この心は一度は蕭
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