ォた。それは私の生命の憧憬の対象があたえられないからだと思った。その憧憬の対象すらも判然とは定まっていなかったけれど、それは人格物でなければならないことだけは解った。私は他の人格を求めてるのだ。他の生命を慕うていたのだ。私は自己のみで生きるに堪えないのだ。他の生命との抱擁よりなる第三絶対者に私の生活の最後の基礎を置こうとしてるのだ。この内部生活の転換こそ心の不安であり、動揺であり、生命を求むるあこがれこそ心の寂寞に相違ないと思った。
 かれこれするうちに夏休暇が来て私は故郷に帰った。私の生命を慕い求むる憧憬はますますその度を深くした。そして日に日に切迫してきた。それは宗教的の熱度と飢渇とを示した。乾いた山の町に暑くるしき生を持てあましながら、私は立っても、坐っても、寝ても心が落ちつかなかった。
 私は何も読まず、何も書かず、ただ家の中にごろごろしたり、堪えかねては山を徘徊したりした。私の生命は呼吸をひそめて何ものかを凝視していた。
 この頃から私の生き方はだいぶ前とは違ってきだした。私の内部の切実なる動乱は私をただインテレクチュアルな生き方のままに許さなかった。私は内部の動揺に、情意の
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